【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
そして、頬に優しく触れていた指先は、私の髪のを引っつかむ。



「……………っ!」



「泣いてなんか、ない。俺は、歌であいつらを苦しめてるだけだ。」



ヤスの、今までどこか感情がなかっか言葉達の中で一番感情の篭った言葉で、私の身体はゾクリ、と無意識のうちに身震いをする。



よほど怯えた顔をしたのだろう。ヤスは私の髪からすぐに手を離した。



「すまない。…忘れろ。」



それ以上聞くな、詮索するな、と言わんばかりのヤスに、私も何か言えるはずもない。



だけど『忘れろ』だなんて無理。



だって、やっぱりヤスが泣いてるみたいに見えて、しょうがないんだ。
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