【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
放課後、満面の笑みを浮かべるように晴れていた空が、どす黒い雲に覆われて涙のように雨を降らせた。



天気予報では一日晴れだと言っていたのに、しとしとと雨は降り注ぐ。



基本的に坊ちゃまお嬢ちゃん学校だから、殆どの生徒は車で帰って行く。



そんな中、私は雨を凌ぐものもなく、ひたすら家まで歩いていた。



最初こそ走っていたけれど、ここまでびしょ濡れになってしまえば走ることも無意味だと思えて来たのだ。



雨空を見て、その濁りがヤスの瞳みたいだ、なんて思えた。
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