【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
嫌いなはずの奴なのに。



なのに、あいつの闇を知りたい。手を差し延べたいなんて思う。



差し延べたせいで墜ちても悔いはないとさえ思う。



きっと、ヤスのこの闇を兄貴は知っているけど、口を割らないだろう。



勿論本人も、言うわけがない。



だったら私は、私が何かすることで知ることが出来る人物に聞くしかないということだ。



私は一人だけ、その条件にピッタリ嵌まる人物が頭を過ぎった。



浴槽に浸かりながら、ぐ、と手を拳にして、水面を叩いた。



びりびり痛む左手は、覚悟の痛みと受け止めて…。
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