【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
「飛鳥ちゃん、ラーメンは好き?」



「はい。高級料理よりは。」



私の返事に社長はクスリと笑う。



「私も同じ。どんなに稼いでお金があったって、大衆料理程美味しいものはないわ。」



そう言って社長が車を止めたのは、小さな、お世辞にも綺麗とは言えないラーメン屋。



「私が貧乏な学生だった時代からの馴染みの店よ。」



油で曇ったガラスの着いた木の扉を開くと、香るラーメン屋の美味しそうな匂い。



社長のシャネルのスーツには不釣り合いな、そんな匂いだ。
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