【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
私を壁側に押しやり手を付いて顔を近付けるヤス。



チッと舌打ちをしたヤスは、その濁った漆黒の瞳を私に向ける。



その濁った漆黒からは、ひしひしと怒りを感じる。



「…いらつくんだよ。勝手に巻田アスナ、しやがって。」



「怒ってるのはそれだけじゃないのでしょう?」



何をされるのか、何を言われるのか怖いけど、それなりの覚悟はしている。



ヤスは口元だけ歪めて笑うと、私の前髪を引っ張る。



「…分かってるじゃん。じゃあ、俺のこの怒り、どうやって晴らすの?」



その声と濁った漆黒は本気だ。



私は喉をゴクリ、と鳴らし生唾を呑んだ。
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