【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
「い…いや、別に何も。木酪君が月野森きららだなんて、そんなこと微塵も聞こえてないよ。」



って、私の馬鹿!全部聞いてましたって言ったようなもんじゃん。


動揺し過ぎると、人間って口が滑る生き物だ。絶対に。



「…要するに、全部聞いてたわけだ。」



木酪泰則はそれだけ言うと、私を無理矢理立たせ、私のローファーを拾い上げたかと思うと、私を引っ張りずんずん歩き出す。



「ちょっと木酪君、どこに…!」



「誰にも会話聞かれない場所。」



木酪泰則は振り返り私に言う。その表情は長い前髪で窺えない。



最悪だ。やっぱり、カラオケなんか来るんじゃなかったな。
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