【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
一年と少し前、渋谷某所。
突然作られた特設ステージに、野次馬好きの人間がちょろちょろと集まっている。
もっと、もっと集まれ。俺に注目が集まれば集まるほど、奴らを苦しめられる。
俺は母に似た自分の化粧した顔にふっと鼻から息が漏れた。
驚くほど、冷たい顔で笑っている自分でも思う、綺麗な女の顔。
社長が、年齢と性別、全てが謎の方がいい、と言って俺にロリータを着るように命じた。
それが、俺の見た目を『女』に変え、母に似せた。
好都合だ。奴らにだけは、俺が誰だか分かるからな。