【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
そのいかにも女の子な見た目とは裏腹に、深く、艶めかしい低音の声で歌うそのロリータの子。



「何あの子…男の子?」



何処からか、そんな声が聞こえた。歌声は男そのものだ。



………と、思っていた次の瞬間、再び人々はざわめき出す。



ロリータの格好をした男の子だと思っていたその子が、突然、透き通ったソプラノの声で、同じ曲を英語で歌い始めたからだ。



男の人の出す声ではなく、繊細かつ、優しい女性の声。



男声の時の高い音とは違う、完全な女声だ。



何処で嗅ぎ付けたのか、テレビ局のカメラがその子を囲み、レンズを向けていた。



沢山の人とカメラの中、その子は動じることなく歌っていた。
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