【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
木酪泰則の手を、腕を強く前に出し、力を緩ませてから振り払う。



「ふーん…いい度胸だね。」



「な…何!?誰にも言わないってば!さっきの電話のことも、そのどす黒い性格も!」



私がそう言うのを、木酪泰則は冷たく濁った目で見ていた。



髪の毛の奥から見たその漆黒の瞳は、確かに『月野森きらら』に酷似している。



木酪泰則は黙って私のおさげを掴むと乱暴に引っ張り、一つの部屋に無理矢理私を投げた。



どうやら、この部屋はもう使われてない小さなカラオケ部屋らしい。



木酪泰則は、尻餅をついた私に馬乗りになり、顎を指で掬った。
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