【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
口を強く縛った私に、兄貴が目を細める。



ああ、こいつも、ヤス程じゃないけど綺麗な顔をしている。



「悩んでるのは、飛鳥だけじゃないと思うけどね。」



「………へ?」



それじゃあまるで、あの悪魔が、自分のしたことを悔いてるみたいだ。有り得ない話だ。



「今は、お互い距離をとって考える時間なのかもね。丁度、タイミングも重なったし。」



「何の、タイミングが?」



兄貴の言葉っていつも主語がない。馬鹿だから、しょうがないか。



私の考えてることなんかお見通しなのか、少し不機嫌に眉間に皺を寄せ、兄貴が言う。
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