【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
酷いことをされたのに、会えないのが嫌だなんて、そんなの馬鹿げてる。



だけど、そう思うのに、心は違うんだ。



「大丈夫。ヤスならもう、小さな手が差し延べてくれてるから、闇に、憎しみに呑まれても、一人で歩いたりはしないよ。」



兄貴は穏やかに、えらく真面目にそう言うと、私の手を握り、ニッコリ笑う。



「…キモい。手を離せ。」



「えええ!飛鳥ちゃん酷いわ!この意地悪子猫ちゃんめー!」



素直にありがとうとは言わないけど、兄貴、気持ちは伝わったよ。
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