【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
兄貴と話し終わった後、私はお風呂へ向かう。



身体を洗い流し、湯舟に浸かると、霜焼けした指先から、ジーンとお湯が染みる。



「堕ちちゃった、なあ…。」



自分でも、無意識のうちにそう呟いていた。



悔しいけど、初めてヤスの本性を知ったあの日のヤスの言葉通り。



私は、あの悪魔に手を引かれ、カラメルみたいな、黒くて、苦くて、甘い世界に堕ちてしまった。



だけど引かれたその手を、今度は私が少しだけ、光の方へ引っ張ることが出来た、のかな?
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