【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
ヤスの手が、必死で何かを求めているように、ゆらり、と上がる。



私はその手を、失わないように掴んだ。



繊細な、作り物みたいな指に、自分の指を絡めると切なくなる。



ヤスは無言で私の手を握りしめると、ぎゅ、と、私の身体を強く抱いた。



「このまま溶け合って、光だけ残ればいい。」



世界的なアーティストだからか、言うことがいちいち詩人くさい。ヤスじゃなきゃ、許されないと思う。



「溶け合ったら光も溶けてなくなるよ。だけど、このままドロドロになっちゃうのも、いいかもね。」



なんて馬鹿げた答え。有り得ない理想。
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