【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
香織に洗いざらい吐いた後、うちに帰ると珍しく家の鍵が開いていた。
今日は母はパート、父も仕事のはずだ。パートが早く終わったのかな。
「ただいまー…。」
リビングのドアを開くと誰もいない。まさか、鍵をかけ忘れて出たの?だったら不用心にも程がある。
はあ、と溜息をついて2階に上がると、なんだか、少し煙かった。
…もしかして、もしかする?
私は淡い期待を胸に、自分の部屋でなく、向かい側の部屋をノックした。
その音が、私の涙腺も一緒にノックした、気がする。