【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
ドアを開くと、兄貴とは違う煙草の匂いがぶわっと押し寄せる。



「………よ。」



久しぶり過ぎて、なんて声をかけたらいいのか分からない私は、小さな声でそう言う。



相変わらずの濁った漆黒の瞳。そんな瞳が私に向く。



作り物みたいな見た目と、滑らかな白い肌。



「少し、痩せた?」



「あー、ライブ一回につき、3キロくらいね。そのあと打ち上げで少し戻してもプラマイゼロにはならないから。」



ふーっと煙草を噴き出したヤスはなんだか少し会わないうちに、更に大人っぽく、色っぽくなった。
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