【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
そして木酪泰則は、私の目を濁った漆黒の目で見つめて言う。



「あんたのこの眼鏡が気に食わないんだよね。」



そして何の前触れも脈絡もなく、私の眼鏡を取り上げた。



「やっ…!返して!」



取り上げられた眼鏡は私の届かないところへ投げられ、更に前髪を掻き上げられる。



私は咄嗟に顔を隠そうとしたけれど、木酪泰則の冷たい掌に阻まれた。



「やっぱり。アスカ、綺麗な顔してる。」



「…っ!男顔っていいたいなら言えば!?」



綺麗だなんて、そんな風にストレートに言われたのは初めてだったから、私は言葉が詰まり俯いた。
< 50 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop