【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
男声のきららが、私の身体にさっきとは違う感情を沸き上がらせる。



椅子に座り頭を掻きむしったり、立ち上がりカメラに向かってジャケットを脱ぎ捨てたり、崩れ落ちたり。



私の身体が、私じゃないみたいに男に化ける。



カメラを睨み据え、痛みを、苦しみを沈黙で訴える。



何度も何度もそれを繰り返し、気が狂いそうになった頃、立ち去るシーンを撮って、私はクランクアップを迎えた。



「飛鳥ちゃん全ての撮影終了です!お疲れ様でしたー!」



その声に、重しが取れたように身体が楽になる。



私の役目、やっと終わった。
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