【完】歌姫、そんな声で鳴かないで!
全ての撮影が終わったのは、驚くことに夜中の3時だった。
後部席の方が寝やすいだろうと、衣装を前に積んで私とヤスを後ろに乗せ、車を走らせる兄貴。
兄貴のいつも通りさに、ヤスの顔に、息に、不覚にも安心してしまう。
嫌いなのに、ムカつくのに。
気が付いたら、私はヤスの肩を借りて、疲れを癒すように眠っていた。
「良く頑張った方なんじゃない?」
なんて、ヤスの上から目線の少し優しい言葉を意識の遠くで聞きながら…。