華と月
荷物を置いて、デッキスペースで海を眺めていた葵の元へやってきたのは…

「ここにいたのか…」
葵は、その声に気付き振り向いた。

「ハヤトさん」

「隣、いいか?」
と、遠慮がちに聞いてきた。
葵が、こくりと頷くとハヤトは隣に腰かけた。

ハヤトは、葵の不安そうな様子に気付くと
「どうした?やっぱり不安か?」と、言いながら
頭を撫でた。

葵は、ハヤトを見つめたまま
「正直言うと、不安です…。でも…私に出来る事をせいいっぱいしようって思います」

そう言う時の葵の顔は、少女の顔つきじゃなく
大人びた顔をする。

ハヤトは、その顔にセンティを重ねて見てしまう。
その瞳の切なさに
葵は、気付いてしまった。

ハヤトさんは、私を通して違う誰かを見ている。

誰なの…?

葵と同じように気付いた人物がいた。

壁に隠れ、声をかけるタイミングを失いそのまま一部始終を見ていた柊は、ハヤトに対し怒りを覚えた。
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