華と月
先を歩いていた葵のもとへ、柊は走って追い付いた。
「待って!アオイ!」

柊の声に、葵は振り返り足を止めた。

「どこ行くの?そっちじゃないよ」
と柊が言ったら
「あ、ごめんなさい…
ちょっとぼーっとしてて」と、葵はぎこちなく笑う。

柊は、葵をぎゅっと抱きしめた。

「アオイ、俺を頼ってよ…」と呟くように言うと…

葵も自然と、柊を抱きしめていた。

すると、葵は静かに語った。
「…昔を思い出したの
私のいた世界にね、夏祭りがあって、こんなふうに露店が並んでいて…、
私はお気に入りのネックレスを見つけたの。」
 
柊は、葵の頭を撫でながら聞いている。
葵は、話を続けた。

「勿論、両親にねだったわ
買ってって
お気に入りで、どうしても欲しくて…
でも、結果はダメだった…」

柊は、うんとただ頷くだけ。
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