華と月
行くアテもない旅
葵は、走っていた。

後ろを振り返らずにずっとずっと…。

行く先は、先が見えない銀世界。

右も左も真っ白で、葵だけが1人立っていた。

やがて蝶の屋敷が見えなくなった頃…

雪が少し解けている岩を見つけ、岩に座った。

「ふぅ…これからどうしよう?」

岩に座ったら、走っていた葵の足の痛みが和らいで行く。

その時、右側から馬車の音が聞こえてきた。

馬車に乗っていた、商人の男性が葵を見て

「おや、君はそんな所で何してるのかい?」

と、声をかけてきた。

「あ、あのすみません…ここら辺はどこなんでしょうか?」

「ああ、アンタ蝶の家紋の…新人さんかい?」

「え、違っいや…そうです…」

葵はゴクリとツバを飲みながら
「(ごめんなさい)私、アゲハ姉さんに買い物頼まれて、でも道に迷ってしまって…
あの、街まで馬車に乗せてもらえませんか?」

商人は、笑顔で
「あぁ、いいよ」
と答えた。

葵は、嘘ついた事に罪悪感を感じた。

そして馬車の後ろに乗り込む。 

葵は、馬車の中から小さくなっていく屋敷をそっと見た。
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