華と月
葵Said

葵は、小さくなっていく屋敷から馬車の中へと視線を映した。

馬車は、ガタガタ揺れ
馬車が緩やかなカーブを曲がった頃
数分もしない内に、馬車はスピードを落とし停車した。

馬車は、街の入り口に停まった。
馬車の外から、主人は
「お嬢さん、着きましたよ」と声をかける。

葵は「あっ」と何かを思い出したように小さく声を出す。

葵は、お金を持っていなかったのだ。

馬車を降りて
葵の困ってるような素振りを見た主人は

「ああ、お代は要りませんよ」

「え、でも…」

それじゃぁ、と手を挙げ馬車の主人は、馬車を動かし走り去っていた。

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