華と月
「ふぅ~…お、まだ名を名乗ってなかったな
俺は、ハヤトよろしくな。」

「私は、紗来葵です。
よろしくお願いします。」
葵は気になる事を聞いた。

「あの、どうして私が蝶の者だと?
それにどうして頭を下げてはダメなんですか?」

「あー、質問はいっぺんに言うな
一個ずつ答えるから、落ち着け。」

葵は、知らずの内に身を乗り出し早口になっていた。

「いいか、なぜアオイが蝶の者が解ったかと言うと、その洋服さ。」

「洋服…?」

葵の視線は、自分の着てる洋服へと移り、また直ぐに前を見た。

その時、いつの間にか先ほどの女性がお茶を持ってきて、テーブルの上に置いて去って行った。

ハヤトは、お茶を飲みながら話を続けた。

「そう、その洋服は特別だ。
まずアゲハは、ここら一帯の責任者だ。
つまり、偉い人物さ
その蝶の家紋は力を持つ。
その家紋は、力を見せつける為だけじゃない
その家紋が付いてる洋服は、身体を護るようにもなってるんだ」

ハヤトは、お茶を飲み終わったのか
湯呑みをテーブルの上に置いた。

「それで、何故頭を下げるなと言ったか…
答えは簡単だ。
さっきも言ったように、アゲハは上の偉い人物。
アゲハ蝶の家紋着てるって事は、アゲハから護られてる証だからだ」

「それじゃ、街の人達は?」

「あぁ、ちゃんと護られてるよ
見てみな、このテーブルもこの湯呑みにも全て蝶の模様が入ってる
だけどアオイの模様と、
この模様は少し違うって事。」

知らず知らずの内に、二人は前に乗り出し
話をしていた。

「じゃ、やっぱりここは違う世界なんだね…」

葵は、小さく呟いた。

「ん…?違う、なんだって?」

葵の呟きに、ハヤトが、聞いてきた
葵は、困ったように苦笑いをした。

「あ、なんでもないんです
気にしないでください」

ハヤトは、葵に向かってこう言った。

「困り事か…?アオイ、良かったら俺に話さねぇ?
ほっとけないんだよね!
こういうの」

ハヤトの真剣な顔に偽りは見えない。
それを見て、葵はクスッと笑った。

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