世界で1番嫌いな人


『…あの、えっと…』

『あ、おじさん怪しい者じゃないからね。君、ひいらぎ学園の子だよね?』


 どうみても怪しい人にしか見えない。

 男はにやにやしながら、さらにあたしに近づいて来た。



『よかったらおじさんとお話しよう。少しだけでいいから』

『ご、ごめんなさい。…あたし急ぐので…』


 あたしはその男の隣を通り過ぎようとした―――が、


『待ってよ、お嬢ちゃん』


 気持ち悪い毛だらけの腕に捕まって、身動きがとれない。


『10000円あげるからさ、ちょっとだけ触らせてよ。』


 背筋を冷たい汗が通るのがわかった。

 足が地面に張り付いて動かない。


『あれ?10000じゃ足りない?じゃあ15000円でどうかな?』

『はっ離して、ください…っ』

『少しくらいいいだろう?ほら、こっちにおいで』


 ぐいぐいと路地裏の方へ引っ張られていく。


 やだ…!

 このままじゃ、あたし…!



『誰かっ、誰かたすけて…っ』
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