改訂版・時間よ、止まれ。
少しの重い沈黙の後、優祐は私に向かって口を開いた。
「………俺、転校することになった」
頭を何かで殴られたような衝撃だった。
転校?
優祐が、転校……?
私と優祐は、もう一緒にいられないの…?
あまりのショックに、言葉すら出なかった。
頭の中が、真っ白。
瞳に映っているはずの夕方の公園の景色も、色あせて見えてきた。
「…驚いたろ?俺も昨日、さおりとの電話が終わった後に親父から聞かされてさ。親父が県外に転勤になったんだ」
「うん……」
私はまだ上手く反応できなかったけど、優祐はゆっくりと私に説明を始めた。
「親父がもうこっちに戻れる保証はないみたいで、家を売って家族ごと引っ越すことになりそうなんだ。…俺だって、さおりと一緒の高校に通うって約束がある。だから、俺だけでもこっちに残りたいって詰め寄ったんだけど……」
「…それで、お父さんとケンカしちゃったんだ……」
やっと出てきた言葉が、それだった。
すごくショックで、とても苦しい。
とても悔しい。
…とても、辛い。
私は思わず、スクっとベンチから立ち上がった。
「…もう、お別れなの……?」
言いたくなかった。
優祐だって、『別れ』という言葉を敢えて避けて話してたのに……
でも、もはや私達がこれまでと同じように付き合っていけないこと──
そして、同じ高校に行くという夢が果たせないことは、明確な事実として突き付けられていた。
それに気付いた瞬間、一筋の涙が私の頬を伝った。