改訂版・時間よ、止まれ。
「夏祭り。その時はまだこっちいるから。一緒の高校行く約束は果たせなくても、せめてそっちの約束は守らせてくれないか?」
「でも、それが終わったら……」
「終わるまでは、俺の彼女でいてほしい。なあ、さおり。笑って別れないか…?」
笑って別れる…?
そんなこと、できるわけないじゃん。
すると、急に私の前に優祐の手が伸びてきて、私をまた優祐の隣に座らせた。
「今のまま別れても、お互い悲しい気持ちしか残らない。俺、さおりと楽しい思い出作りたいんだよ。最後の最後まで…」
「無理だよ。別れを前提にデートしろなんて」
「じゃあ『別れ』って考えるな。…俺を見送ってほしい」
「見送る…?」
「誰にも見送られないで出発するなんて、寂しいだろ」
そこまで言うと、優祐は私の手を取って、そのまま公園の外へ歩き始めた。
つながれたままの手が、切なくて、苦しくて……。
私の目から、また涙がこぼれてきた。
「さおり。帰り道、こっちだろ?」
「うん…」
気付けば、いつも優祐と下校する時に手を振って別れる交差点に着いていた。