改訂版・時間よ、止まれ。
「いや、俺はただ、新井にアドバイスしただけだよ。黙ってるだけじゃ、井上さんに心配かけるだけだから、ちゃんと説明しろって」
「そうだったんだ…」
「でもでもでも!でもさぁ、遠距離で続けていくんでしょ?」
華恵が横からそう問い詰めてくると、私は静かに下を向いて首をフルフルと横に振った。
「ええ〜!!何で?…別れちゃったの……?」
「はなちゃん!俺達受験生だよ?離れたらさすがに会うことはできないだろう」
「でも、そんなのってないじゃん!!せっかく付き合い始めたばっかりなんだよ?嫌いで別れるわけじゃないのに…」
「…それは、新井と井上さんが一番強く感じてるよ」
この会話で、華恵と市川くんが私達のことを思ってくれてることが、痛いぐらいに分かった。
それが余計につらい。
「正確にはまだ別れてないよ。…夏祭りに行く約束してるから」
「でもそれ、逆にキツくないの?」
「…優祐、見送ってほしいって言ってた。笑顔で見送ってほしいって……」
「………さおりぃーーーっ!!」
私の無理した笑顔が、逆に華恵を悲しませてしまったのかな…?
華恵は私に抱きついて、私の胸で泣きじゃくり始めた。
市川くんもしゃがみこんで、華恵の頭を優しくなでた。