改訂版・時間よ、止まれ。





「…新井らしいな。普通なら昨日の時点で別れてるだろうに」



「私と、最後まで楽しい思い出を作りたいって言ってた。このまま別れても、悲しい思い出しか残らないって…」



「そっか。それは新井ももちろんだと思うけど、井上さんもそうじゃない?」



「…えっ!?」






私は市川くんの言葉の意味がよく分からなくて、思わず聞き返してしまった。






「井上さんも、あのまま別れてたらしばらく元気になれないくらい落ち込んでたかもしれない。だから…、それで良かったんじゃないかな」



「優祐…、そこまで考えてたのかな…?」



「そこまでは分からないけど…、やっぱりお互い悲しいまま別れるのは酷過ぎると俺は思うよ」



「市川くん……」






優しく華恵の頭をなで続ける市川くんの姿から、華恵に対する想いがたくさん伝わってきた。





そんな、彼女のことを一生懸命想える人だからこそ、市川くんの言葉に妙に納得してしまった。





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