改訂版・時間よ、止まれ。
「…すげー綺麗だな」
ポツリと言った優祐の一言が聞こえてきて、私は花火から優祐の横顔に視線を移した。
夜空を彩る花火の光と同じ色に、優祐の顔も染まっていく。
だけど、私はいつもの優祐らしくないな…って思いながらその横顔を眺めた。
いつもなら、もっと花火にはしゃぐハズなのに。
今日は静かに、ただ花火を見つめているだけだった。
「…優祐?どうしたの?」
「ん?どうしたって、普通だろ?」
「…そっか。そうだよね」
重ねられた手の温もりだけは、いつも通り。
だけど、花火が終わって、この手が離れると……
そう思った途端、花火にはしゃげない優祐の気持ちが分かった気がした。
私はとにかく楽しい思い出だけ残そうと思って、タイムリミットが近づいていることを頭の隅に追いやっていた。
…優祐は今、何を考えているんだろう?
しばらく優祐の横顔を見ていたら、花火の音が連続して聞こえるようになり、連発花火が始まったことを知った。
確か毎年、この花火大会って、最後に連発花火するんだよね?
…ということは、もうすぐ終わり……?
不意に優祐との『終わり』も見えたような気がして、私は唇をかみしめた。
気を緩めたら、涙が出そう。
…泣かないって、笑顔で送り出そうって、そう決めたのに。