改訂版・時間よ、止まれ。
「それでもいい。私、頑張れるよ」
「さおり…?」
「きっと、ハタチなんてすぐ来るよね!?」
笑顔を絶やしたくなかった。
だから泣きたいのをごまかすように、私は無理矢理笑った。
「もし忘れたら、罰ゲームだよ。今日は焼きそばしかおごってもらえなかったから、別の物おごってもらうから」
「言ったな!?そんなこと言って、さおりが忘れてたら逆におごってもらうからな!!」
私達は笑い合って、最後の一発の花火を見上げた。
夜空いっぱいに広がる、大きな大きな花火。
こんなに華やかなのに、散るのは一瞬。
生まれてはすぐ消える…はかない花火。
まるで、今二人で交わした約束のように…、弱くてもろい。
「あーあ。終わっちまったな。…そろそろ帰るか」
「そうだね」
夜空には、花火の余韻とでもいうように、白い煙がくすぶっていた。
手すりから手を離そうと思った瞬間、優祐に後ろから抱きしめられた。
お互い何も言わなかったけど、言わなくても気持ちなんて手に取るように分かった。
…もう、お別れなんだね。