改訂版・時間よ、止まれ。
…大丈夫。
泣かない。
『5年後』なんて、守られるかも分からないような約束しか、私達の間にはないけれど。
絶対また会える。
そんな、根拠もない自信だけが、私を支えていた。
「なあさおり…」
「うん、何…?」
「さおりは自分のやりたいように生きろよ。俺もそうするから」
「やりたいように…?」
「ああ。俺、自然体のさおりが好きだから」
「…分かった」
「じゃあな」
そう言った後、優祐の手が離れた。
そして優祐は後ろを向いて、自分の家の方へとゆっくりと歩き始めた。
その姿を見送りながら、私は知らぬうちに泣いていた。
次々と頬を伝う涙は、もう止められないほどあふれてきて…
優祐が角を曲がった瞬間に、私は足から崩れ落ちるように座り込んで泣いた。
…私、優祐を笑顔で見送れたよね…?
泣かなかったよね…?
優祐の思い出に、私の笑顔しか残ってないよね…?
ねえ、優祐。
私の思い出の中には、あなたの笑顔しか残ってないよ…?
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