改訂版・時間よ、止まれ。
目を輝かせながら市川くんの話をする華恵の横でため息をついて、私は掲示板を後にした。
すると、慌てた様子の華恵が小走りで私を追いかけてきた。
「ごめんごめん!ねえ、新入生の説明会、一緒に行こうよー」
「ちょっとは傷心の友達を気遣ってよー」
「ごめんって。…ねえ、新井にはこのこと報告するの?」
「え?優祐?」
たぶん意識的にだと思うけど、優祐と別れてからは、華恵も市川くんも優祐の話題を避けてくれていた。
だから久しぶりに優祐の名前を聞いて、私の胸は少し跳ねた。
「…聞こうかどうか、迷ってたんだけど…、ホントにさおり、新井と連絡取ってないの?」
「うん。取ってないよ。だって、別れてるのに…」
「嫌いで別れたわけじゃないじゃん。それに、連絡先はお互い知ってるわけだし…」
「…私、思ったより心が弱かったみたい」
「…えっ!?」
私達はS高の校門をくぐって、中学校に向かうためバスに乗った。
中学校の近くのバス停に止まるまで約15分、私は優祐と別れた後の気持ちの変化を華恵に話した。
「私、優祐と別れてしばらく、ずっと家で携帯とにらめっこしてた」
「新井の連絡を待ってたの…?」
私は華恵の言葉に軽くうなずいて、制服のポケットから携帯を取り出した。