改訂版・時間よ、止まれ。
「別れてるんだから、連絡なんてあるわけないのに。ずっと、優祐に電話しようか、メールしようか……、電話帳で優祐の名前を探してしまうんだよね」
「さおり…」
「でも、優祐は最後に言ったから。受験勉強頑張れって。こんな携帯とにらめっこしてる暇があったら、机に向かって勉強しなくちゃって」
「それで一心不乱に勉強してたんだ…」
華恵の表情が、少し切なく見えた。
でも私は話を続けた。
「優祐のためだって考えたら、とにかく勉強に集中するしかなかった。でも…、結局落ちちゃったけど」
「もしかして、新井と行くつもりだったの?S高……」
「うん。最初に優祐と決めた志望校だったから」
私は携帯の画面をのぞき込んだ。
もちろん、待ち受け画面のまんま。
私はこの待ち受け画面を、どれくらいの時間見続けてたんだろう…?
私は、携帯の画面から窓の向こうに視線を移した。
私がS高に受かってたら、通学路になるはずだった道。
…毎日通ることはできなくなっちゃったな。
珍しく華恵が黙り込んでしまって、私もそれ以上特に何も言わないまま、目的のバス停に着いた。
バスを降りると、そこで意外な人物に出くわした。
「あれ…?確か、優祐のクラスだった…?優祐の彼女だよね!?」
「えっ!?斉藤さん???」