改訂版・時間よ、止まれ。
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「そうでしたか…。残念でしたね。先生も井上さんが頑張ってるのを知ってたから、ちょっと悔しい気分だな」
職員室にいた担任の先生に優しく言われて、やっと悔しさの涙が出そうになったんだけど……
ここはぐっとこらえて先生の顔を見た。
すると先生は、何か思い付いたように手を叩いた。
「あっ、そうだ。新井くん、いたでしょ?井上さん、結構話してたよね?」
「あ、はい。ゆうす……じゃなかった、新井くんがどうかしましたか?」
「新井くんから預かってて……、井上さんに渡したいものがあるの」
「え…?」
優祐が、私に…?
「うちの学校、同窓会名簿の作成で、受験直前で転校した子にもその後の進路調査してるの。その時の返答書類に、これも挟まってて…。でも内容から、井上さんの受験終わるまでは渡せないかなと思って持ってたのよ」
「はあ…」
穏やかに微笑む先生から渡されたのは、小さな紙切れだった。