改訂版・時間よ、止まれ。
『先生へ
3年3組 井上さおりに県立K高校普通科にサッカーで行くことになったことと、頑張れって伝えてください』
…確かに、優祐の字だ。
書き殴った様な、雑で汚い字。
だけど、優祐の気持ちが込もっている字だった。
「K高校…?ですか……」
「ええ。サッカー推薦で行くってところが新井くんらしいわよね」
やっぱりサッカー推薦なんだ。
そう言えば自力で勉強したいって言ってた理由が、私と一緒にいたいからだったもんね。
私がいなくなっちゃえば、頑張って勉強する意義もなくなっちゃうし。
優祐はずっとサッカーやってたいって言ってたから、サッカー推薦は当然と言えば当然か…。
私は優祐の字が書かれた紙切れをそっと折りたたんで、制服のポケットに入れた。
一言二言先生と話をしてから職員室を出ると、そこで華恵と市川くんが話しながら待っていた。
「あれ?市川くん…」
「あ、井上さん。いや…こんなつもりじゃなかったんだけど…」
「…え?」
市川くんの話が読めなくて、華恵の方に目線を向けると、華恵は焦ったように説明を始めた。