改訂版・時間よ、止まれ。
「そのクーラーボックス、たぶん一番重い荷物だと思うけど…」
「だから持つんだろ。俺、サッカーで鍛えてるから大丈夫だって」
あんなにめんどくさそうな顔をしていたのに、新井は急に爽やかな笑顔を見せた。
「井上は救急箱、ちゃんと持てよ」
「分かってるわよ!」
なんで…
急に優しいところなんて見せてくるの…?
こんなの、ずるすぎるよ。
一番重い荷物引き受けて、笑顔で「大丈夫」なんて…。
自分だけオイシイ所持ってくんじゃないわよ。
「1班ーー!準備できましたか?そろそろ登りますよ」
「あっ、はーい!!」
その時、担任の先生の声が聞こえてきて、班長である私は大きな声で返事をした。
「じゃあ、出発しよう。みんな1列に並んで。ペース遅くなりそうなら、班長の私に声掛けてね」
私達1班は担任の先生の元に集い、班長の私を先頭にして1列に並んだ。
「つーか、井上が一番歩くの遅そうだから、逆にみんなペース上げれなくて疲れんじゃね?」
「一言多い!新井!!」
積極的に重い荷物持ってくれて、もしかして新井、イイヤツだったの!?
…とか少し思ったけど、言ってることはやっぱ相変わらずだわ。
私が新井に感心した時間、返せっ!!
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