改訂版・時間よ、止まれ。
そこまで言うと、華恵は少し考え込んで黙ってしまった。
静かになってしまったこの雰囲気に耐えられなくなって、私はまた話を続けた。
「…なんか、あきれるよね。あの時はそんないい加減な儚い約束でもすがりたかった。じゃないと、自分が辛すぎてどうにかなっちゃいそうだと思ったから。でも……、この約束が、逆に次に踏み出せなくなってる。優祐が、今でも私の支えなんだよね…」
「でもきっと、今の離れ離れの状態で関係が続いてたとしても、結局どっちかが耐えきれなくなって別れることになる。そう思ったから、転校する時に別れるって決断を下したんでしょ?」
華恵の口調が、珍しく真剣だった。
…確かに、華恵の言う通り。
会えないと分かっている以上、これからも今まで通りの関係を続けていくことは無理。
そう思ったから、私達は別れた。
「新井はさ、きっとこうなることを望んでないよ」
「えっ…!?」
「私がもしミツルくんと離れることになってしまったら、ミツルくんには幸せでやっていてほしいと思うよ。例え隣にいる人が私じゃなかったとしても……」
向かいに座っていた華恵は、そう言った後穏やかに微笑んだ。