改訂版・時間よ、止まれ。





「きっと新井は、成人式でさおりの元気な姿を確認できればそれでいいんだよ。もし成人式の時に隣に誰か別な人がいても、さおりが幸せなら……、そう思ってそんな約束をしたんじゃないかな?」




「……華恵?」




「きっと…、新井に縛られずに、自由に生きろってことだよ」






華恵の言った言葉に、聞き覚えがある気がする。








あれ?



私、この言葉、どこかで聞いたことがある。





聞いたことがあるはずなのに…、思い出せない。








「さおりはどう?新井が自分のことで気持ち引きずってて、他の恋に進めないってなってたら、何か嫌でしょ?新井に幸せになってほしいって思わない?」




「…うん。私、ずっと心の中で新井に問い掛けてる。幸せかなって………、あっ」







思い出した。





華恵の言ってた、『自由に生きろ』。






これって、最後に優祐が言ってた言葉だ……。








『自分のやりたいように生きろ』




『自然体のさおりが好きだ』








この言葉の意味って…、もしかして……






自分にとらわれることなく、私が次に好きになった人と、好きなように生きてくれってこと…?







どうして今まで気付かなかったんだろう?








優祐の言葉の意味に気付いた途端、涙が一粒二粒とこぼれてきた。






私が泣いていることに気付いた華恵は、向かいの席から私の隣の席に移ってきてくれて、私が泣き止むまで静かに肩を抱いていてくれた。













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