改訂版・時間よ、止まれ。
「私、中学の時からずっと好きな人がいて。今、遠い所にいるから、自分の想いがかなうとは思ってないんだけど…」
「…違う学校の人か。確かになかなか会えないから難しいよね。それでずっと片想いしてたんだ?」
「うん。でも、成就しないって分かってるのに諦められない。忘れられない。…どうすればいいのかなって」
すると美奈は黙って空を見上げて、少し何かを考えているようだった。
私も同じように、いつもより少し雲の多い空を見上げた。
「……忘れられないなら、無理に忘れることなんてないんじゃない?」
「え?」
私が空から美奈に視線を移すと、美奈はまた穏やかな笑みを私に見せてくれた。
「忘れようとするから忘れられないんじゃん。『忘れたい』ってことは、それだけ意識してるってことでしょ?だから、自然の流れにまかせればいいと思うけど」
「でも……、それでも忘れられなかったら?」
「その時はそれだけその人のことが好きってことだよ。隠す必要もないじゃん」
美奈がこうやってハッキリと言ってくれると、本当にそんな気がする。
忘れなくていいんだ…
自然に優祐のことを想っていていいんだ……って。
「…どうしたの?誰かに忘れろって言われた?」
「ううん…。そういうわけじゃないけど、次に進めないのが苦しいというか…、だって想ってても辛いだけなのに」
「苦しめばいいじゃない。逆にこんな風に苦しめるのって、うらやましいけどな」
「えっ!?うらやましくないよ…」
何言ってるんだろう、美奈…。
苦しむのがうらやましいなんて。