改訂版・時間よ、止まれ。
何で…、そんなこと聞いてくるんだろう?
「…井上さん、好きな人がいるんだろ?新井…とか言うヤツだっけ?」
「あ、うん…」
そういえば、中原くんとちゃんと恋愛の話をしていなかった気がする。
中原くんはこの前、漫画の感想で恋愛観をチラッと語ってくれてたけど……
私はただ、
『好きな人がいて、離れてしまったけど忘れられない』としか話してなかった。
「何かさ、俺ら色々話してきたけど、こうやって恋の話するのって無かったよな。もし良かったらだけど、新井のこと……、聞かせてくれないか?」
「私の…、恋の話?」
中原くんからこんな提案があるなんて、正直驚いた。
でもこんな話、何も知らない人に一から話すことなんて…、できないよ。
私がためらっていると、中原くんは椅子を回して私の方に身体を向けてきた。
「昨日の井上さん、すごくキツそうに見えたんだ。……やっぱりサンタから新井の嫌なウワサ聞いたからだろ?」
「『キツそう』か…。私、そんな風に見えてたんだ……」
「ずっと絶叫系ばかり乗ってただろ?それにいつもよりも妙にテンション高かったし。だから忘れたかったんじゃないかと思って。サンタから聞いたこと……」
私の気持ち、みんなお見通しなんだね。
中原くんに切なそうな顔でそんな風に指摘されると、私まで胸が苦しくなりそう。