改訂版・時間よ、止まれ。
報われる保証なんて、どこにもないのに。
中3の夏休み、『成人式で会おう』と約束した。
あの時、きっと成人式なんてすぐやって来ると思ってたんだ。
何も知らないで……
5年間がこんなに長いことも、苦しいことも、何も知らないで……
私はその約束を、『優祐の最後の優しさ』だと思ってたんだ。
だけど、今となっては分からない。
ねえ、優祐……
優祐はあの時、何を思ってあんな約束を交わしたの…?
お互いすぐそんなことなんて忘れると思った?
それとも本気で5年待てると思った?
優祐が新しい恋を見つけているなら、私もやっぱり新しく歩きださないといけないのかな?
私だけがこんなにしつこく優祐のことを想っていても…
もう無駄なのかな?
私は、優祐との最後のデートで『成人式で会おう』と約束したことを中原くんに話した。
「つまり…、その約束が今も井上さんを縛り付けてるってことなのか?」
「縛られてるのかな?そんな風に思ったことはなかったけど、あの約束があるから私は『優祐のことを想ってていいんだ』って思える。だからずっと好きでい続けてきたんだ」
「俺には井上さんを縛り付けているようにしか思えないよ。井上さんのニュアンスだと、強制力のある約束でもなさそうだし。強いて言うなら、あいまいな優しさというか……」
「あいまい?」