改訂版・時間よ、止まれ。





そうか。





生徒手帳には当然、私の名前が書いてある。





その名前を叫んでいた人に渡しておけば、いずれは私の手に渡るって考えたんだ…。








「ふーん…。何か変な話」






急に、私の右隣に座る美奈が会話に割って入ってきた。






「え?どの辺が?」



「生徒手帳なんて、さおりの手紙が入ってなかったとしても身分証明にもなるし大事なものじゃん。なのにあっさり友達に預けて届けさせるなんて…」



「ああ…、そう言われてみればそうかもしれないけど、近藤さんの考え過ぎじゃないかな?」



「そうだよ、美奈。電話してたんだから仕方なかったんじゃないかな?」



「そう?中原もさおりもそう思うならそうかもしれないけど、ちょっと気になっただけ」







美奈がいきなりそんなこと言い出すから、大して気にしてなかった私までちょっと変に思っちゃったよ。







確かに、私とぶつかった人がすぐに生徒手帳に気付いたなら、私を追いかけて直接渡せばいいこと。





なのにわざわざ友達と中原くん経由で返してもらうのも変なような……。










「おーーい。考え込んでるトコわりいけど、もーすぐ目的地じゃね?」



「え?マジで?みんな、ちゃんと荷物準備しろよ」






つり輪を持って立っていても、まだ前髪をいじっているサンタに言われて今停まっている駅を見たら、ちょうど目的の駅のひとつ前の駅だった。






ここまで来ると、目的駅まであと1、2分くらい。






私達はそれまで考えていた疑問を慌てて頭の隅に追いやって、急いで荷物やお土産を手元に固め始めた。













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