改訂版・時間よ、止まれ。
「新井は高校に入って、ちゃんとサッカー部に入って頑張ってるみたいだよ。1年で唯一レギュラーにも選ばれてるみたいだし。だけど高校に入った途端、女関係が激しくなったみたいで……。俺はとっかえひっかえどころじゃなくて、二股三股かけてるって聞いたんだ」
「うそ…」
「だから、泣かせた女の子もかなり多いみたいで、K高ではサッカーと女泣かせの新井って有名らしいよ」
「信じられないよ。そんなの、優祐じゃない」
信じたくない。
そんな噂。
だけど、市川くんが実際にその噂を聞いたことは間違いないみたいで、その後何も言うことなく、ただ静かに華恵の出してくれたジュースを飲んでいた。
「私もミツルくんも、そんなの信じてないよ。だからさおりに話さなかったってのもあるし。でもここまで広まってると……」
華恵も市川くんも、私のこと考えてくれてたんだ。
私のことを思ってくれたから、私の耳に入らないようにしてくれてたんだね。
その優しさだけでも充分嬉しくて、私は二人に笑顔で向き直った。