改訂版・時間よ、止まれ。





深くため息をついた華恵は、紅茶の中にあったティースプーンをかき混ぜながらまた話し始めた。






「……あの約束。明日だったよね?ホントに新井来るかな?」



「え…?」






華恵……、覚えてくれてたんだ?






中3の夏休み、私と優祐が交わした、あの約束。








華恵には高校生になってから話したけど、あれから何年も経ったし、正直忘れてるかと思ってた。






「確かに地元はここだけど…、住民票はこっちにもうないはずだし、招待はされてないよね。あっちサボってこっちに忍び込むつもりかな?」



「どうだろう?そもそも優祐があの約束を覚えてるかどうかさえ怪しいんだけど」



「覚えてるに決まってんじゃん!じゃなきゃ、あの手紙に『ありがとう』なんて付け足さないよ!!」






華恵…



こんなに私のためにムキになってくれてる。






それだけでも私はほっこり嬉しくなった。






「ありがと…。私、例え優祐が来なかったとしてもちゃんと成人式には出席するから」



「当たり前だよ。さおりが明日風邪ひいても迎えに行くから覚悟しといてね」






華恵がそんなこと言うから、私は思わず「はははっ」と大笑いした。





そんな私を見た華恵も、一緒に笑い出した。





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