改訂版・時間よ、止まれ。
やっと屋上にたどり着いた。
少し強かった雪は弱まって、しんしんと静かに降っていた。
「俺達、ここで最後に花火見たんだよな」
「…そうだね」
「あの時、成人式の日にここで会おうと約束した。そして約束通り、俺達はここにいる」
「優祐、約束なんて忘れちゃったかと思った」
「はははっ。それは俺も同じだよ。あんな曖昧な約束、忘れても当然だと思ったし。俺も今日、半信半疑でここに来たんだよな」
「あの時…、優祐はどんな気持ちであの約束を交わしたの?やっぱり私のわがままをおさめるため?」
「え…?」
優祐は屋上の手すりを掴んだまま、ゆっくりと私の顔を見てきた。
私はただ真っ直ぐに、優祐の反応をうかがった。
「………俺のわがままだよ。最後のわがまま」
優祐はそう言うと、照れたように笑って、雪の降る曇り空を見上げた。
「『離れたくない』ってさおりの気持ちが、あの時痛いほど伝わってきた。それは俺だって同じだったから」
うそ……。
あの約束は、優祐の最後の願いだったの…?