改訂版・時間よ、止まれ。
「井上…?何お前、何でもない所でコケてんだよ」
あれ?
この声…、新井???
私はまだ起き上がれなかったけど、顔だけ後ろに向けた。
そこにはキョトンとした顔の新井。
私は新井を無視しようと決めていたのに、その顔に少し腹が立って、つい反撃に出ようとしてしまった。
「うっ、うるさ……、痛っ」
思いのほか足に痛みが走った。
何でこんなトコ、新井になんて見られてんだろ。
正直、一番見せたくなかった相手…。
「大丈夫かよ?歩けるか?」
「か、構わないでよ」
「ちょっと見せてみろよ」
「ちょ……!?」
また新井にバカにされるかと思っていたけど、意外にも新井は私の身体を起こして、足のケガを見始めた。
「手当てした方が良さそうだな。ちょっと待ってろ」
「え…?」
新井はそう言うと、「ちょっとタイムー!」と言いながら審判役の先生の所に向かって行った。
ちょっとして戻ってきた新井の手には、私が持ってきた救急箱があった。
「ここは逃げるヤツや鬼が通るかもしれないから、場所移動しよう。鬼と先生には、井上の手当てが終わるまでは俺達を捕まえないように言ってあるから」
「何、勝手に…」
「早く消毒しないと、治りが遅くなるぞ。ほら、立って」
まだ地面にペタンと座り込んでいた私の前に、新井が立った。
そして新井は強引に私の両手を掴んで、私を立ち上がらせた。