改訂版・時間よ、止まれ。
救急箱の片付けが終わった新井は、私の顔を見ながら遠くの方へ向けて指をさした。
私はその指の方向を見つめた。
すると…
そこには頂上からの景色がとても綺麗に広がっていた。
私達が住んでいる街の景色の向こうには、青い海も少し見えた。
「すご…っ!きれい…」
私は思わず感嘆の声を上げた。
新井は照れているのか、その表情を隠すように、街の景色を眺めていた。
その横顔は、何故だかきらめいて見えて。
自分でも不思議なんだけど、素直に感じた気持ちがあふれてきた。
「ありがとう、新井。助けてくれて……」
「ああ…、俺は井上に謝らないとな。ホントは井上、班長としての仕事ちゃんとやってくれてたんだな。俺、全然知らなくて、井上の仕事の邪魔ばっかしちまった」
「私こそ、新井無視してゴメン」
「でもよぉ、言ってくれても良かったんじゃねえの?『これからクラスみんなで缶蹴りするから逃げるライン引いてる』って知ってれば、俺だってすぐに別の場所に移動したのに」
「え?言ってなかったっけ?」
「言ってねえし!『班長の言うこと聞け』の一点張りだっただろ?いくらなんでもそこから井上のやってること想定できるわけないし」
「うそ!?」
…そう言われてみれば、あの時ちょうど新井の放ったサッカーボールが背中に直撃して、怒り爆発寸前だったんだよね。
新井に事情を説明することすら、イライラしてて忘れてたかもしれない。