改訂版・時間よ、止まれ。
「そ…、そうだったかも。ホント、ゴメン」
「いや、もういーし。この景色見てると、どうでもよくなってきた」
「うん。綺麗だね、新井」
私がそこまで言うと、新井は私の方に向き直った。
そんな新井の顔は、とても穏やかだった。
よく考えてみると、二人でこうやって素直に話したのは初めてのような気がする。
理不尽なパシリをされたり、下らない言い合いもたくさんした。
それだけに、こうやって素直な気持ちで向かい合うことにかなり照れてしまった。
どうしたらいいんだろう…?
こんな空気が初めてで、戸惑ってしまった。
ドキンドキン…
遠くではまだ缶蹴りが続いているみたいで、クラスのみんなの楽しそうな声が、風に乗って聞こえてくる。
だけど私は、自分の心臓の大きな鼓動を抑えるのに必死だった。
ただ…、隣にいる新井に、この鼓動が聞こえないように。
それだけを祈りながら、私は広がる街の景色を眺めた。
ドキンドキン…
高鳴る鼓動。
だけどこの心地、悪くはない。
むしろ、ずっとこのままでいたいと思った。
時間よ、止まれ。
私が初めてそう思った瞬間だった。
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