改訂版・時間よ、止まれ。
完璧すぎるライバル
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「さおりさぁ、最近私思うんだけどね…」
「うん、何…?」
「ねえ、さおり。ちゃんと聞いてる?」
「何、華恵?ちゃんと聞いて………わっ!!」
あのハイキングの日から1か月ほど経った、5月のよく晴れた日。
3時間目と4時間目の間の休み時間に、教室の前のドアの辺りで華恵と話していたら………。
「どうしたの!?華恵!その頬のキズ!!」
「え?朝言ったじゃん。家の階段から転んじゃったって」
「そ、そうだっけ?大丈夫なの?」
「うん。奇跡的に頬のかすり傷で済んだよ。日頃の行いが良いからね〜、私は」
「や、それはどうだか分かんないけど。それよか、さっき何か言いかけた?」
「そうだよ!!さおりがまたボーッとしてるからさ!」
「『また』って何よ?そんなにボーッとしてないでしょ?」
「してるって。現にこの頬のキズ、今気付くなんてあり得ないでしょ?」
「うっ、まぁ……、それはゴメン」
ヤバいなあ…。
確かに華恵の指摘通り、最近の私、何だかおかしい気がする…。
あんまり人の話、聞いてないみたいだし。
「いーよ!もう慣れてきたし。てかさぁ、最近さおりって、ある方向をよく見てるんだよね〜。さおり、自分で気付いてる?」
「え?普通だよ。いつもと変わらないでしょ?」
「ううん。じゃあ教えてあげる。さおり最近、新井の方ばっかり見てるよねー」
「………はっ!?」
私が、新井の方ばっかり見てるって!?
そんなわけないじゃん!!