改訂版・時間よ、止まれ。
「もしかして、自分で気付いてないの?先月ぐらい……、あのハイキングの後ぐらいからかなぁ?」
「そっ、そんなことないって!新井のことなんて全然気にならないんだけど!」
「そぉ?確かにいつもの口ゲンカは変わらないけど、さおりが何だか楽しそうになったような……」
「それ、華恵の気のせいじゃない?」
何で私が新井のことなんて……
見てない見てない見てない見てない!!!
そんなこと、天地がひっくり返ってもありえない!
そんな会話が行われるとは知らない新井は、教室の後ろの方でいつもつるんでる男子達と大声で笑いながら会話を楽しんでいた。
ああっ、もう!!
人がこんなに責められてるってのに、ホント呑気そうにバカ騒ぎしてるし……、ムカつくーー!
「ねえ、あの缶蹴りの時、何かあったんじゃないの〜?」
「華恵、勘ぐりすぎ!何もないし。私はただ、新井に手当て受けただけ」
あの新井の手当てが良かったのか、私の足は傷跡すら分からないくらい、綺麗に治った。
二人で素敵な景色を見て、素直になって話したのはあれが初めてだったけど……
今のところ、あれが最後でもある。
ハイキングから帰ってきた次の日からは、またいつも通り、口ゲンカの日々。
あの日の会話は何だったんだろう…
なんて、私は少し考え始めていたところだった。
まさかそんなことで、華恵が勘ぐってしまうくらい私の様子が変になるなんて。
自分自身、何かショックかも。